私たちの身の回りには、年齢や身体能力、障害の有無、使用する言語などが異なる、さまざまな人が暮らしています。子ども、高齢者、車いすを利用する人、視覚や聴覚に障害のある人、日本語に慣れていない人、重い荷物を持っている人、ベビーカーを押している人など、同じ場所や製品を利用する人であっても、その状況や使い方は一人ひとり異なります。
そこで重要になるのが、ユニバーサルデザイン(Universal Design/UD)という考え方です。
ユニバーサルデザインとは、年齢、性別、身体能力、障害の有無、言語、文化などの違いにかかわらず、可能な限り多くの人が利用しやすいよう、はじめから製品や環境、サービスなどを設計する考え方です。特定の人だけのために特別なものを用意するのではなく、できるだけ多くの人が自然に利用できる方法を考えることが大きな特徴です。
たとえば、自動ドアは車いすを利用する人だけのものではありません。子どもや高齢者、ベビーカーを押している人、両手に荷物を持っている人にとっても便利です。文字だけではなくピクトグラムを使った案内表示も、日本語が読めない人や、小さな子どもに情報を伝える助けになります。
つまりユニバーサルデザインは、「一部の人のための特別なデザイン」ではありません。
人にはさまざまな違いがあることを前提として、できるだけ多くの人にとって使いやすい状態をつくるデザインなのです。
現在では建築や公共空間だけでなく、家電製品、パッケージ、グラフィックデザイン、Webサイト、アプリ、公共サービス、交通、教育など、非常に幅広い分野で取り入れられています。
この記事では、ユニバーサルデザインの意味から、バリアフリーとの違い、7つの原則、身近な事例、UDフォントやピクトグラム、Web・グラフィックデザインで意識したいポイントまで詳しく解説します。
ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザインとは、できる限り多くの人が利用できるよう、製品や環境などを設計する考え方です。この考え方を広めた人物として知られているのが、アメリカの建築家・デザイナーであるロナルド・メイスです。ノースカロライナ州立大学のCenter for Universal Designでは、ユニバーサルデザインを「特別な改造や特殊な設計を必要とすることなく、可能な限りすべての人が利用できる製品や環境のデザイン」と定義しています。
重要なのは、「特定の人だけを対象にする」のではなく、人の違いを最初から設計条件に含めることです。
たとえば、
- 立っている人にも座っている人にも操作しやすい
- 右利きでも左利きでも使いやすい
- 色だけに頼らなくても情報を判断できる
- 日本語が分からなくても意味を推測できる
- 小さな力でも操作できる
- 見るだけでなく、音や触覚からも情報を得られる
といった設計が考えられます。
ただし、ユニバーサルデザインは「一つのデザインですべての人のあらゆる問題を完全に解決する」という意味ではありません。国連の障害者権利条約における定義でも「可能な最大限の範囲で」という考え方が示されており、必要に応じて特定の障害のある人のための支援機器などを利用することも否定されていません。
つまり大切なのは、100%すべての人に同じ方法を押し付けることではなく、できるだけ多くの人が利用できる選択肢や環境をつくることなのです。
ユニバーサルデザインが必要とされる理由
ユニバーサルデザインが重要なのは、私たち一人ひとりの能力や状況が同じではないからです。
そして、「使いにくさ」は必ずしも障害のある人だけに発生するものではありません。
たとえば、普段は問題なく小さな文字を読める人でも、暗い場所では読みづらくなることがあります。けがをして片手が使えないときには、普段簡単に操作しているものが突然使いにくくなるかもしれません。海外旅行中には、現地の言葉が分からず、文字よりもピクトグラムのほうが理解しやすいことがあります。
赤ちゃんを抱えているときや、両手に荷物を持っているときには、自動ドアの便利さを強く感じるでしょう。
このように、人の「使いやすさ」は固定されたものではなく、年齢、身体の状態、周囲の環境、そのとき置かれている状況によって変化します。だからこそ、最初から多様な利用者を想定して設計することには大きな意味があります。
ユニバーサルデザインは、特定の人だけにメリットをもたらすものではなく、結果として多くの人の使いやすさ、安全性、分かりやすさを向上させる可能性を持っています。
ユニバーサルデザインの目的

ユニバーサルデザインの大きな目的は、利用する人の違いによって生まれる「使えない」「分からない」「届かない」「危険」といった障壁を、できるだけ設計の段階から生み出さないことです。
そのためには、単純に機能を追加するだけではなく、
使いやすいこと
複雑な操作や大きな力を必要とせず利用できる。
分かりやすいこと
経験や知識、使用する言語などに大きく左右されず、必要な情報を理解できる。
認識しやすいこと
文字、色、形、音、触覚などを適切に組み合わせて情報を伝える。
安全であること
多少の操作ミスが重大な事故につながらないようにする。
選択肢があること
一つの方法だけを強制せず、利用者が自分に合った方法を選べる。
といった複数の視点から考える必要があります。
つまりユニバーサルデザインとは、単に「やさしいデザイン」にすることではありません。
利用者の多様性を前提に、誰が・どこで・どのような状況で利用するのかを考えながら、使いやすさを設計することなのです。
ユニバーサルデザインとバリアフリーとの違い

「ユニバーサルデザイン」と一緒に使われることが多い言葉に、バリアフリーがあります。どちらも人々が生活するときの障壁を減らし、暮らしやすい社会をつくるための重要な考え方ですが、考え方の出発点には違いがあります。
バリアフリーとは
バリアフリーは、生活の中に存在する「バリア(障壁)」を取り除くという考え方です。たとえば、階段しかない建物にスロープを設置する、段差を解消する、手すりを追加するなど、利用するうえで障壁となっているものを改善していきます。
特に高齢者や障害のある人などが直面する障壁を解消する文脈で使われることが多い言葉です。
ユニバーサルデザインとは
一方、ユニバーサルデザインは、設計の最初から多様な利用者を想定することを基本としています。完成してから「使えない人がいるので設備を追加しよう」と考えるのではなく、企画・設計の段階から、さまざまな人が利用することを条件として考えます。
たとえば、特定の利用者だけが別の入口を利用するのではなく、できるだけ多くの人が同じ入口を自然に利用できるように設計するといった考え方です。
バリアフリーとユニバーサルデザインを比較すると
| 項目 | バリアフリー | ユニバーサルデザイン |
|---|---|---|
| 基本的な考え方 | 存在する障壁を取り除く | 障壁が生まれにくいよう最初から設計する |
| 主な対象 | 障壁によって不便を感じる人 | できる限り多様な人 |
| タイミング | 既存環境への改善・対応を含む | 企画・設計段階から考慮する |
| 代表例 | 段差へのスロープ追加、手すりの設置 | 自動ドア、分かりやすいサイン、使いやすい操作系 |
ただし、どちらか一方が優れているという関係ではありません。
既存の建物やサービスにはバリアフリーによる改善が必要になることがありますし、新しく設計する場合にはユニバーサルデザインの考え方を取り入れることができます。
目的に応じて両方の考え方を活用することが大切です。
ユニバーサルデザイン7つの原則
ユニバーサルデザインを考えるうえで重要なのが、1997年にロナルド・メイスを含む建築家、プロダクトデザイナー、エンジニア、研究者らによってまとめられた「ユニバーサルデザインの7原則」です。
7原則は、
- 公平な利用
- 利用における柔軟性
- 単純で直感的な利用
- 認知できる情報
- 失敗に対する寛容性
- 少ない身体的努力
- 接近や利用のための大きさと空間
という7つの視点から構成されています。
1. 誰にとっても公平に利用できること
公平な利用・Equitable Use
能力の異なるさまざまな人にとって、有用で利用しやすいデザインであることです。可能であればすべての利用者に同じ利用方法を提供し、それが難しい場合でも、できるだけ同等の方法を提供することが求められます。また、一部の利用者だけを不必要に分離したり、「特別な人」として扱ったりしないことも重要です。
例
- 自動ドア
- 幅の広い改札
- 段差の少ない出入口
- 多くの人が同じ経路を利用できる施設設計
2. 使い方を柔軟に選べること
利用における柔軟性・Flexibility in Use
人によって得意な操作や身体能力は異なります。そのため、一つの使い方だけを求めるのではなく、利用者の好みや能力に合わせて複数の方法を選択できるようにします。右利き・左利きの両方に対応することや、利用者自身のペースで操作できることなども、この原則に含まれます。
例
- 左右どちらの手でも操作しやすい道具
- タッチ操作とキーボード操作の両方に対応したシステム
- 文字入力だけでなく音声入力も利用できるサービス
- 高さを調整できる机や設備
3. 使い方が簡単で直感的に分かること
単純で直感的な利用・Simple and Intuitive Use
利用者の経験、知識、言語能力、集中力などにかかわらず、使い方を理解しやすくすることです。必要以上に複雑な操作をなくし、情報を重要な順番に整理し、操作した結果が分かるようにフィードバックを返すことも重要です。
例
- 押す場所がひと目で分かる大きなボタン
- 操作手順が少ない券売機
- アイコンと文字を併用したメニュー
- 操作後に完了したことが明確に表示される画面
「説明書を読まなければ何もできない」よりも、見たときに次の行動を予測できるデザインが理想です。
4. 必要な情報を認識できること
認知できる情報・Perceptible Information
周囲の環境や利用者の感覚能力にかかわらず、必要な情報がきちんと伝わるようにします。重要なのは、一つの感覚だけに情報伝達を依存しないことです。たとえば「赤だから危険」と色だけで伝えるのではなく、文字、形、アイコンなども組み合わせます。音声案内だけではなく文字表示も用意するなど、視覚・聴覚・触覚など複数の方法を組み合わせることが有効です。
例
- 駅の電光掲示板と音声アナウンス
- 点字と文字を併用した案内
- 色だけでなく形や記号でも区別できるグラフ
- 十分なコントラストを確保した文字表示
5. 操作ミスが大きな危険につながらないこと
失敗に対する寛容性・Tolerance for Error
人は必ず間違えるという前提に立ち、誤操作や意図しない行動が重大な事故や損失につながらないように設計します。危険な操作を行いにくくしたり、間違えた場合に警告したり、元の状態に戻せるようにしたりすることが重要です。
例
- 誤操作を防ぐ確認画面
- 「元に戻す」機能
- 危険な操作を行う前の警告表示
- 手を離すと停止する機器
- 入力ミスを分かりやすく知らせるフォーム
デザインでは「間違えないよう注意してください」と利用者に責任を求めるだけではなく、間違えても大きな問題にならない仕組みをつくることが大切です。
6. 少ない身体的負担で利用できること
少ない身体的努力・Low Physical Effort
無理な姿勢や大きな力、繰り返しの動作などを必要とせず、できるだけ疲れず快適に利用できるようにします。身体への負担が少ない設計は、高齢者や筋力の弱い人だけでなく、長時間利用する人にとっても使いやすさにつながります。
例
- レバー式のドアハンドル
- 軽い力で操作できる蛇口
- 自動ドア
- 少ない動作で操作できる機器
- 長時間でも無理のない姿勢で利用できる設備
7. 近づき、操作するための十分な空間があること
接近や利用のための大きさと空間・Size and Space for Approach and Use
立っている人、座っている人、身体の大きさが異なる人、車いすや杖を利用している人などが、無理なく近づき、見て、手を伸ばし、操作できる空間を確保します。
例
- 車いすでも方向転換できるスペース
- 幅の広い通路
- 座った状態でも届きやすい操作ボタン
- ベビーカーでも利用しやすい通路
- 立った状態でも座った状態でも確認しやすい案内表示
単に設備そのものを使いやすくするだけでなく、そこへ「近づけるか」「手が届くか」「見えるか」まで考えることがポイントです。
7原則は「チェックリスト」ではなく設計の考え方
ここで注意したいのは、7原則をすべて満たせば自動的に「良いデザイン」になるわけではないということです。原典でも、7原則はユニバーサルな使いやすさを考えるための指針であり、実際のデザインでは経済性、技術、安全性、文化、ジェンダー、環境、美しさなど、ほかの条件についても考慮する必要があるとされています。
つまり、「7項目を満たしているから完成」ではなく、「さまざまな利用者の視点からデザインを見直すための基準」として活用することが大切です。
身近にあるユニバーサルデザインの例
ユニバーサルデザインは、特別な施設だけに存在するものではありません。普段何気なく利用しているものの中にも、多くの工夫が取り入れられています。
自動ドア
自動ドアは、手でドアノブを回したり、重い扉を押したりする必要がありません。
車いす利用者、高齢者、子どもだけでなく、荷物を持っている人やベビーカーを押している人にも便利です。
エレベーター
エレベーターでは、大きなボタン、低い位置に設置された操作盤、点字、音声案内、階数表示など、複数の方法で情報を伝える工夫が見られます。
駅や公共施設の案内
文字、矢印、色、ピクトグラムなどを組み合わせることで、情報を素早く理解できるようにしています。
シャンプーボトル
シャンプーとコンディショナーなどを、見た目だけではなく触った感覚でも判別できるよう、容器に凹凸などを設ける工夫があります。浴室では眼鏡やコンタクトレンズを外している場合もあるため、視覚だけに頼らない識別方法は多くの人に役立ちます。
スマートフォン
スマートフォンには、文字サイズの変更、画面の拡大、音声読み上げ、音声入力、字幕、色の調整など、多様な利用方法が用意されています。一つの画面を全員に強制するのではなく、利用者自身が自分に合った状態へ変更できることも、ユニバーサルデザインにつながる重要な考え方です。
情報にもユニバーサルデザインが必要
ユニバーサルデザインというと、スロープや自動ドアなど「もの」や「建物」をイメージしやすいですが、情報の伝え方も重要なデザイン対象です。
どれだけ重要な情報でも、読めなければ伝わりません。
たとえば、
- 文字が小さすぎる
- 背景と文字の色が似ている
- 専門用語ばかり使われている
- 色だけで情報を区別している
- 情報量が多すぎて重要な部分が分からない
- ボタンなのか装飾なのか判断できない
- 日本語が分からないと理解できない
といった状態は、情報へのアクセスを難しくします。
そのためグラフィックデザインやWebデザインでは、単に「おしゃれに見せる」だけではなく、必要な情報が正しく認識され、理解され、行動につながるかまで考えることが重要です。
UDフォント

UDフォント(ユニバーサルデザインフォント)は、文字の見やすさ・読みやすさ・判別しやすさなどに配慮して設計された書体です。
たとえば、似ている文字を判別しやすくしたり、小さいサイズでも文字の形がつぶれにくくなるようにしたり、数字や欧文を見分けやすくしたりと、書体によってさまざまな工夫が施されています。モリサワのUD書体でも、「文字のかたちがわかりやすい」「文章が読みやすい」「読みまちがえにくい」といった観点が重視されています。
代表的なUDフォントには、
- UD新ゴ
- BIZ UDゴシック
- BIZ UD明朝
- UDデジタル教科書体
- イワタUDフォント
などがあります。
特に公共施設の案内、学校教材、行政資料、医療、金融など、情報を正確に伝える必要性が高い場面では、文字の判別性は非常に重要です。ただし、「UDフォントを使えばそれだけで読みやすくなる」というわけではありません。
文字サイズ、行間、文字間、1行の長さ、背景とのコントラスト、情報量、レイアウトなども含めて設計する必要があります。
ピクトグラム

ピクトグラム(pictogram)とは、情報や意味を視覚的な図や記号によって伝える図記号です。
文字を読まなくても意味を推測しやすいため、駅、空港、商業施設、観光地、公共施設など、さまざまな人が利用する場所で活用されています。日本では1964年の東京オリンピックをきっかけに、競技や施設を分かりやすく示すピクトグラムが体系的に整備され、その後のサインデザインにも大きな影響を与えました。現在では案内用図記号についてJISによる標準化も進められています。2025年には、案内用図記号をデザインする際の原則と、その理解度を評価する試験方法について新たなJISが制定されました。
身近な例としては、
- トイレ
- 非常口
- エレベーター
- 駐車場
- 禁煙
- 案内所
- 手荷物受取
- 公共交通機関
などの表示があります。
ただし、ピクトグラムであれば必ず誰にでも伝わるわけではありません。独自性を優先して記号を抽象化しすぎると、かえって意味が分からなくなることがあります。
ピクトグラムでは「美しい形」だけではなく、見た人が正しく意味を理解できることが非常に重要です。
色のユニバーサルデザイン
情報デザインでは、色の使い方にも注意が必要です。
人によって色の見え方には違いがあります。また、ディスプレイや照明、印刷環境によっても色の見え方は変化します。そのため、「赤は重要、緑は安全」のように、色だけに意味を持たせるデザインは避けることが基本です。
たとえばグラフであれば、色だけではなく線の種類、模様、記号、文字などを組み合わせます。
エラー表示であれば、入力欄を赤くするだけではなく、「入力内容に誤りがあります」と文字でも伝えます。
色は情報を分かりやすくする非常に強力な要素ですが、色が分からなくても意味が成立する設計を考えることが重要です。
Webサイトにおけるユニバーサルデザイン
現在では、ユニバーサルデザインを考えるうえでWebやデジタルサービスも欠かせません。Web分野では特にWebアクセシビリティという考え方が重要になります。
W3Cが策定するWCAG(Web Content Accessibility Guidelines)2.2では、Webアクセシビリティの基本原則を、
- Perceivable:知覚可能
- Operable:操作可能
- Understandable:理解可能
- Robust:堅牢
という4つに整理しています。
具体的には、
- 画像に代替テキストを設定する
- 動画に字幕を用意する
- キーボードだけでも操作できるようにする
- 文字と背景に十分なコントラストを設ける
- ボタンなどの操作対象を押しやすくする
- 見出し構造を適切に設定する
- 入力ミスの内容と修正方法を分かりやすくする
- スクリーンリーダーなどの支援技術でも利用できるようにする
といった対策があります。
これは障害のある人だけのためではありません。スマートフォンの小さな画面を使っている人、屋外で画面を見ている人、音を出せない場所で動画を見る人、マウスを使いにくい状況にある人など、さまざまな利用環境で使いやすさの向上につながります。
「見やすい」と「分かりやすい」は違う
デザインにユニバーサルデザインを取り入れるとき、特に注意したいポイントがあります。それは、見やすいデザインと分かりやすいデザインは必ずしも同じではないということです。
文字を大きくすれば視認性は上がります。
しかし、すべての文字を大きくすると、どの情報が重要なのか分からなくなってしまいます。色をたくさん使えば項目を区別できますが、色が増えすぎれば情報の関係性を理解しにくくなる可能性があります。
ピクトグラムを増やせば文字量は減りますが、意味の分からないアイコンばかりになれば、かえって操作しにくくなります。つまり重要なのは、単純に「大きくする」「色を変える」「UDフォントを使う」ことではありません。
情報の優先順位を整理し、利用者が迷わず認識・理解・判断・行動できるようにすることが、本質的な情報デザインにつながります。
ユニバーサルデザインを制作に取り入れるポイント
ユニバーサルデザインを実際の制作に取り入れる場合は、完成後に「配慮を追加する」のではなく、企画段階から考えることが重要です。
1. 利用する人を一種類に決めつけない
「普通の人なら使える」という基準ではなく、
- 子どもだったら?
- 高齢者だったら?
- 視力が低かったら?
- 色の見え方が違ったら?
- 日本語が読めなかったら?
- 片手しか使えなかったら?
- スマートフォンだったら?
というように、さまざまな利用状況を想像します。
2. 一つの方法だけに依存しない
色だけ、音だけ、文字だけといった伝え方を避け、必要に応じて複数の方法を組み合わせます。
3. 情報に優先順位をつける
情報量を増やすだけでは分かりやすくなりません。「最初に何を見てほしいのか」「次に何を理解してほしいのか」「最終的に何をしてほしいのか」を整理します。
4. 実際の利用者で確認する
デザイナー自身が「分かりやすい」と思っていても、利用者にとって分かりやすいとは限りません。
実際に使ってもらい、
「迷った場所はないか」
「読めない文字はないか」
「意味が分からないアイコンはないか」
「操作できない場所はないか」
などを確認し、改善していくことが大切です。
ユニバーサルデザインは「制限」ではなく、デザインの可能性を広げる考え方
ユニバーサルデザインという言葉から、「ルールが増えて自由なデザインができなくなる」と感じる人もいるかもしれません。
しかし、本来はその逆です。
デザインの役割を「きれいなものをつくること」だけではなく、人と情報、人と製品、人と環境の間にある問題を解決することまで広げて考えれば、ユニバーサルデザインはデザインの可能性を広げる考え方だといえます。
「どうすればもっと多くの人に伝わるか」
「どうすれば迷わず使えるか」
「どうすれば身体的な負担を減らせるか」
「どうすれば間違いを防げるか」
こうした問いを設計に取り入れることで、見た目だけではない、機能するデザインへとつながっていきます。
まとめ
ユニバーサルデザインとは、年齢、身体能力、障害の有無、言語、文化など、人々が持つさまざまな違いを前提として、可能な限り多くの人が利用しやすい製品・環境・サービス・情報を設計する考え方です。
大切なのは、特定の人を後から「特別に対応する」ことだけではなく、企画や設計の段階から多様な利用者の存在を考えることです。自動ドアやエレベーターのような設備だけでなく、フォント、色、ピクトグラム、Webサイト、アプリ、案内表示など、私たちが日常的に触れている多くのものにユニバーサルデザインの考え方を取り入れることができます。
そして、ユニバーサルデザインには「これを使えば完成」という一つの正解があるわけではありません。UDフォントを使うことも、ピクトグラムを使うことも、それ自体が目的ではありません。
誰が利用するのか。
どこで利用するのか。
何を伝える必要があるのか。
どこで迷う可能性があるのか。
どうすればより多くの人が利用できるのか。
こうした問いを繰り返しながら設計することが、ユニバーサルデザインの本質です。
Puzzle Effectでも、見た目の美しさだけではなく、情報の伝わりやすさや使いやすさを考えたデザイン制作を大切にしています。
グラフィック、Web、パンフレット、サインなどを制作するときも、「誰に、何を、どのように伝えるのか」を整理し、利用する人の視点からデザインを考えることが重要です。デザインによって障壁を後から取り除くだけではなく、できるだけ最初から障壁をつくらない。その視点こそが、これからの社会に求められるユニバーサルデザインの大切な考え方です。
Puzzle Effectでもユニバーサルデザインを制作しています。
今後ますます多様化が進む社会において、ユニバーサルデザインの視点を持つことは、私たち一人ひとりにとって重要です。身近なところからその考えを取り入れ、誰にとってもやさしい社会づくりを進めていきましょう。

