アイデアが思い浮かばない、企画がマンネリ化している──そんな時に役立つのが「オズボーンのチェックリスト」です。9つの視点から対象を見直すことで、意外な切り口や新たな活用法を発見できます。
商品開発・サービス改善・デザインなど、さまざまな分野で応用できる実践的な発想法であり、ブレインストーミングの質を高めるツールとしても活躍します。本記事では、各項目の意味や使い方、SCAMPER法やマクドナルド理論といった関連手法までわかりやすく解説。発想に行き詰まったときの突破口を、一緒に探ってみませんか?
オズボーンのチェックリストとは?
オズボーンのチェックリストとは、アイデア発想を促進するための9つの視点からなる思考法です。アレックス・F・オズボーンが開発し、ブレインストーミングの質を高める手法として知られています。
視点には「転用できないか」「応用できないか」「変更できないか」などがあり、対象の用途や形、構成などを多角的に見直すことができます。発想を広げたい場面や商品・サービスの改善、企画立案に有効です。
チェックリスト9ヶ条一覧と使い方と考え方
オズボーンのチェックリストは、アイデアを生み出すための9つの視点から構成されます。具体的には「転用・適合・変更・拡大・縮小・代用・再配置・逆転・結合」です。
対象となるモノや課題に対して各視点から問いを立て、発想を広げていく使い方です。考え方の基本は「もしこうだったら?」という柔軟な発想で、既存の枠を取り払うこと。新商品開発、デザイン、問題解決など幅広く応用できます。
1.転用(Other uses)別の使い道はないか?
「別の使い道はないか?」「他の使い道はないか?」と考える視点です。本来の用途にとらわれず、まったく異なる分野での活用可能性を探ります。例えば、工業用素材を日用品に転用したり、軍事技術を医療に応用するなどが該当します。
視点を変えることで、思いがけないイノベーションが生まれることもあります。既存の資源を活かしながら新しい価値を生み出す手法として、商品企画や業務改善にも活用されます。
2.適合・応用(Adapt)他の方法を応用できないか?
「他のアイデアや方法を応用できないか?」「何かに似せたり、応用できないか?」という発想です。異分野や異業種の成功例、伝統的な手法などを自分の課題に適用することを考えます。
たとえば、ファストファッションのビジネスモデルを飲食業に応用するなど、柔軟な転換が可能です。この視点は、既存のものの本質を見抜き、それを自分の文脈で再構成する力を養うのに役立ちます。
3.変更(Modify)形や性質、意味を変えられないか?
「何かを変えられないか?」「形や性質、意味などを変えられないか?」と問いかけることで、新たな可能性を引き出す視点です。色・形・素材・機能・順序・速度など、あらゆる要素に注目してみます。
たとえば、商品のパッケージを変更するだけで売上が大きく伸びることもあります。既存のものを大きく作り変えるのではなく、一部を変えるだけで新鮮さや独自性が生まれるのがこの方法の魅力です。改善や改良の場面で特に効果的です。
4.拡大(Magnify)大きくしてみたら?
「大きくできないか?」「大きくする、数を増やす、強くすることはできないか?」という発想です。サイズ、量、回数、強度、影響範囲などを拡大することで、新たな価値や利用シーンを生み出します。
たとえば、商品を大型化する、機能を増やす、サービスの提供エリアを広げるなどが具体例です。また、パッケージや広告表現を大きくすることで目立たせる手法もあります。部分的な拡大も含み、特定機能や特徴を強調することで他との差別化を図ることも可能です。
5.縮小(Minify)小さくしてみる?
「小さくできないか?」「小さくする、減らす、簡素化することはできないか?」と考える視点です。サイズや量、コスト、手間、時間などを縮小することで、利便性や手軽さ、低価格を実現します。
たとえば、持ち運びやすいコンパクト製品や、必要最小限の機能だけを備えたシンプルなサービスがこの例です。縮小によって新たなユーザー層を獲得したり、環境負荷を軽減したりできる場合もあります。より多くの人が利用しやすくなるのが、この発想の魅力です。
6.代用(Substitute)代わりのものはないか?
「他のもので代用できないか?」「置き換えられないか?」という発想です。素材や部品、手法、人員、仕組みなど、何かを別のものに置き換えてみることで、新たな価値やコストダウン、性能向上を目指します。
たとえば、プラスチックの代わりにバイオ素材を使った製品や、対面サービスをAIチャットで代用するなどが例です。発想の幅が広がるだけでなく、課題解決やサステナビリティ推進にも効果的なアプローチです。
7.再配置(Rearrange)順番を変えて見る?
「順番や配置を変えられないか?」「構成を変えられないか?」という視点で、構成要素や工程、順序、人の役割などを見直します。たとえば、店舗の導線を変えることで購買率が上がる、工程の順番を変えることで効率化するなどがこの考え方です。
アイデアの本質を変えずに、その見せ方や進め方を工夫することで、大きな改善効果が得られます。特に、業務の流れやサービス提供方法を見直す場面で有効です。
8.逆転(Reverse)逆に考えてみる
「反対にできないか?」「役割を逆にできないか?」という思考法で、視点や役割、工程、立場などを逆にしてみることによって新たな発想を生み出します。たとえば、買い手と売り手の立場を逆にして考える、昼と夜の活動を入れ替える、使い終わった後の状態から商品を考えるなどの発想が含まれます。
常識や当たり前を疑うことで、思考の枠を超えたアイデアが見つかりやすくなります。
9.結合(Combine)他のものと合体してみる?
「他のものと組み合わせられないか?」という視点で、複数の要素や技術、機能、アイデアなどを一つにまとめることで、新たな価値を創出します。
たとえば、スマートフォンにカメラや決済機能を組み合わせたように、異なるものを融合することで利便性や独自性が高まります。異業種とのコラボレーションや、複数機能の統合は、製品・サービスの差別化や新市場の開拓にもつながります。
オズボーンのチェックリストのメリット・デメリット
オズボーンのチェックリストは、固定観念を打破し、多角的な視点でアイデアを広げるための有効な手法です。特に商品開発や問題解決、企画立案の現場で重宝されます。
一方で、チェックリストの各項目を無理に当てはめると、かえって発想が不自然になることもあります。発想の出発点として活用し、柔軟に運用することが重要です。使い方の注意点などを考慮しながらメリット・デメリットを見ていきましょう!
チェックリストのメリット
オズボーンのチェックリストは、9つの視点が具体的に提示されているため、アイデア出しに慣れていない人でも、思考の足がかりを得やすくなります。特に、既存のアイデアや製品を改善・発展させたいときに有効で、「応用できないか?」「別の使い方はないか?」と問いかけるだけで、柔軟な視点が得られます。
ブレインストーミングの導入や企画会議でも使いやすく、短時間で多くのアイデアを生み出せる点が魅力です。また、チームで活用すれば多様な視点が加わり、独創的な案が生まれやすくなります。
チェックリストのデメリット
一方で、チェックリストを形式的に使ってしまうと、逆に発想が硬直化するおそれがあります。全ての視点に無理にアイデアを当てはめようとすると、現実離れした案ばかりが出て、実用性や実現性に乏しくなることもあります。
また、使い慣れていない場合は、各項目の意図を深く理解せずに表面的に適用してしまい、結果的に浅いアイデアに終わることもあります。さらに、自由な発想を促すはずのツールが、逆に発想の枠を狭めてしまうリスクもあるため、状況に応じて柔軟に取り入れる姿勢が求められます。
オズボーンのチェックリストが誕生した背景
オズボーンのチェックリストは、1940年代にアメリカの実業家であり創造的思考の研究者でもあったアレックス・F・オズボーンによって提唱されました。彼は広告業界で働く中で、社員の創造力を高める方法を模索し、効果的なアイデア発想法の体系化に取り組んでいました。
その過程で生まれたのが、自由な発想を引き出す「ブレインストーミング」と、それを補助する具体的な質問集としての「チェックリスト」です。このチェックリストは、既存のアイデアや物事に対して9つの視点から問いを立てることで、新たな活用法や改良案を導き出すことを目的としています。オズボーンの手法はその後、創造性開発や商品開発、教育現場にまで広まり、現在でもアイデア発想法の基本として多くの分野で活用されています。
オズボーンのチェックリストの応用編SCAMPER法
SCAMPER法は、オズボーンのチェックリストをもとに開発された応用的なアイデア発想法で、1970年代に教育者ボブ・エベール(Bob Eberle)によって体系化されました。SCAMPERとは、次の7つの視点の頭文字を取ったものです。
- S:Substitute(代用する)
- C:Combine(結合する)
- A:Adapt(適合させる)
- M:Modify(変更する)
- P:Put to other uses(他の用途に使う)
- E:Eliminate(削除する)
- R:Reverse(逆転する)
この手法は、アイデアや製品、サービスを改善・革新する際に、上記の各項目を問いかけながら発想を広げていきます。オズボーンの9ヶ条をより覚えやすく、教育やワークショップでも使いやすくした形といえます。
特に、ブレインストーミングを活性化させるツールとして有効で、思考の流れに沿って柔軟に活用できるのが特徴です。商品開発や問題解決、教育現場など、さまざまな場面で応用されています。
何も思いつかなければ逆にマクドナルド理論
アイデア会議の中でオズボーンのチェックリストを使ってもうまくいかない時はJon Bell氏が考案したマクドナルド理論というのを使ってみましょう。
「マクドナルド理論」とは、グループでアイデアが出ないときに、あえて“最悪の選択肢”を提示することで議論を活性化させる発想法です。たとえば、ランチの行き先が決まらないときに「じゃあマクドナルドにしよう」と言うと、他の人が「いや、せっかくなら別の店がいい」と反応して別の案が出てくる(私はマクドナルド好きです…)
──この現象を応用したのがマクドナルド理論です。議論が停滞しているとき、的外れでも極端でも構わない案をまず出すことで、他のメンバーの思考が動き出し、結果的に本命のアイデアにつながるきっかけとなります。重要なのは“正解”を狙うのではなく、“何でもいいから動き出す”こと。この理論は会議やブレストの初期段階で特に効果を発揮し、発言しにくい雰囲気を壊す起爆剤としても使われています。
まとめ
オズボーンのチェックリストは、単なる思いつきではなく、論理的に発想を広げるための優れたフレームワークです。9つの問いを通して視点をずらすことで、既存の要素を新しい形で捉え直すことができます。
SCAMPER法やマクドナルド理論と組み合わせることで、さらに柔軟で豊かなアイデアを生み出せるでしょう。大切なのは、正解を出すことではなく、思考を止めずに前に進めること。あなたの企画や問題解決に、このチェックリストがヒントと可能性をもたらしますように。