情報デザイン(Information Design)とは、情報を分かりやすく整理・構成し、受け手が理解・判断・行動しやすい形に設計することです。文字・図・写真・色・レイアウト・アイコンなどを適切に組み合わせるだけでなく、「どの情報を優先するのか」「どの順番で伝えるのか」「どのように分類するのか」といった、情報そのものの構造まで考えます。
私たちは日常生活の中で、ニュース記事、広告、看板、マニュアル、Webサイト、アプリ、地図、商品パッケージなど、膨大な量の情報に触れています。しかし、情報が多ければ多いほど分かりやすくなるわけではありません。重要な情報が埋もれていたり、情報同士の関係が分からなかったりすると、かえって誤解や混乱を招いてしまいます。
そのため現代では、単に情報を発信するだけではなく、必要な情報を、必要な人に、適切な形で届けるための設計が重要になっています。実際にITパスポート試験でも「情報デザイン」が扱われており、情報の可視化・構造化、近接・整列・反復・対比、LATCH、シグニファイア、UXデザインなどが関連する知識として挙げられています。
この記事では、情報デザインとは何か、その目的や具体例、代表的な情報整理の方法について詳しく解説します。
情報デザインとは?情報を分かりやすく伝えるための設計
情報デザインの役割は、情報を単に「見やすくする」ことではありません。重要なのは、受け手が必要な情報を見つけ、内容を理解し、正しく判断し、その後の行動につなげられる状態をつくることです。
International Institute for Information Design(IIID)でも、情報デザインは単なるグラフィック表現ではなく、複雑なコミュニケーション上の問題をデザインによって解決するものとして位置付けられています。具体的には、サイン、地図、時刻表、カタログ、マニュアル、フォーム、データビジュアライゼーション、インフォグラフィックス、Webサイト、法律・契約、医療情報など、非常に幅広い領域で活用されています。
共通しているのは、情報をただ提示するのではなく、人が理解しやすく、判断しやすく、使いやすい状態へ変えることです。
例えば、駅の案内板に大量の文字が書かれていたとしても、自分が乗る電車のホームがどこにあるのか分からなければ、案内として十分に機能しているとはいえません。一方で、路線ごとの色分け、大きく読みやすい文字、矢印、駅番号、ピクトグラムなどが適切に整理されていれば、初めて利用する人でも短時間で必要な情報を見つけることができます。
このように情報デザインでは、単に情報を増やすのではなく、必要な情報を選び、整理し、優先順位をつけることが重要です。「何を掲載するか」だけではなく、「何を省くか」「何を最初に見せるか」「どの情報をまとめるか」まで考えます。例えばイベントのチラシであれば、イベント名、日時、場所、内容、申込方法、注意事項などがあります。これらをすべて同じ大きさ・同じ太さで表示すると、どこから見ればよいのか分かりにくくなります。
そこで、
イベント名 → 日時・場所 → 内容 → 申込方法 → 補足情報
といったように優先順位を整理し、文字サイズ、太さ、色、配置、余白などを使って情報に強弱をつけます。こうした情報の優先順位を視覚的に表現することを、視覚的階層(Visual Hierarchy)と呼びます。
また、情報同士の関係を分かりやすくすることも重要です。関連する情報は近くに配置し、異なる内容との間には余白を設けることで、「ここまでは同じ情報」「ここから別の内容」という区切りを視覚的に伝えることができます。
つまり、余白は単なる空きスペースではありません。情報同士の関係を整理するための重要なデザイン要素でもあります。
情報デザインでは、このほかにも「近接・整列・反復・対比」といった基本原則がよく使われます。近接は関連する情報を近くにまとめること、整列は文字や画像の位置を揃えること、反復は同じ役割を持つ要素に同じデザインを繰り返し使うこと、対比はサイズ・色・太さなどに差をつけて重要度を分かりやすくすることです。
こうした考え方を組み合わせることで、利用者が毎回「これは何の情報なのか」と考えなくても、自然に情報を理解できるようになります。
情報デザインの目的を整理すると、主に次のようになります。
① 情報を理解しやすくする
長い文章を見出しや箇条書きに分けたり、文章だけでは説明しにくい内容を図や写真で表したりすることで、理解しやすくします。
② 必要な情報を見つけやすくする
見出し、カテゴリー、メニュー、色分け、アイコンなどを使い、「どこに何があるのか」を分かりやすくします。
③ 情報の重要度を伝える
文字サイズ、太さ、色、余白などを使って、どの情報から確認すればよいのかを示します。
④ 判断や行動をサポートする
「どの商品を選ぶか」「どこへ進むか」「どのボタンを押すか」といった、その後の判断や行動まで分かりやすくします。
⑤ 誤解やミスを減らす
曖昧な表現や分かりにくい配置を避け、読み間違いや操作ミスが起こりにくい状態をつくります。
このように、情報デザインでは「情報を見せる」だけでなく、理解・判断・行動までを一つの流れとして考えることが重要です。
情報デザインの具体例
情報デザインは、私たちの身近なさまざまな場面で活用されています。
公共サイン・案内表示では、駅や空港、病院、商業施設などで、ピクトグラム、矢印、色、番号などを組み合わせ、多くの人が短時間で必要な情報を理解できるようにしています。
インフォグラフィックスでは、棒グラフ、折れ線グラフ、フローチャートなどを使い、文章や数値だけでは把握しにくい比較、変化、関係性を視覚的に伝えます。
マニュアル・取扱説明書では、文章だけではなく、写真、イラスト、番号、矢印などを使い、利用者が正しい順番で操作できるようにします。
Webサイトやアプリでは、ナビゲーション、見出し、ボタン、アイコン、ページ構造などを設計し、「現在どこを見ているのか」「どこに目的の情報があるのか」「次に何をすればよいのか」が分かる状態をつくります。
地図や路線図も代表的な情報デザインです。現実に存在するすべての情報を載せるのではなく、駅、道路、路線、ランドマークなど、利用目的に必要な情報を選び、分かりやすく整理しています。
つまり情報デザインとは、単に情報を美しく見せるものではなく、複雑な情報を編集し、受け手にとって意味のある形へ変換するデザインなのです。
情報デザインの法則①「LATCH」
情報を分かりやすく伝えるためには、どのような基準で情報を整理するかが重要になります。どれだけ価値のある情報でも、分類方法が分かりにくければ、利用者は必要な情報を見つけることができません。
そこで、情報整理の代表的な考え方として知られているのが、リチャード・ソール・ワーマン(Richard Saul Wurman)が示した「LATCH」です。
LATCHとは、情報を整理する5つの代表的な方法の頭文字を組み合わせたものです。
- L(Location)― 場所
- A(Alphabet)― 文字順
- T(Time)― 時間
- C(Category)― カテゴリー
- H(Hierarchy)― 階層・程度
Location(場所)は、位置関係を基準に情報を整理する方法です。地図、駅構内図、フロアマップ、座席表など、「どこにあるのか」を知りたい場合に適しています。
Alphabet(文字順)は、名称をアルファベット順や五十音順に並べる方法です。辞書、人名一覧、索引など、探したい対象の名前が分かっている場合に有効です。
Time(時間)は、時間の流れや出来事の順番に沿って整理する方法です。年表、スケジュール、時刻表、制作工程などに向いています。
Category(カテゴリー)は、共通する特徴を持つ情報をグループに分ける方法です。例えばECサイトで「家電」「食品」「ファッション」などに商品を分類する場合に使われます。
Hierarchy(階層・程度)は、重要度、価格、人気、大きさなどの基準によって順番をつける方法です。人気ランキング、売上順、価格順などが代表的です。
LATCHは、必ずどれか1つだけを使うものではありません。例えばECサイトでは、まずCategoryで商品を分類し、その中からHierarchyによって価格順・人気順に並べたり、Timeによって新着順に表示したりします。
重要なのは、発信する側が整理しやすい方法を選ぶのではなく、利用者がどのような方法で情報を探すのかを考えて整理することです。
情報デザインの法則②「アフォーダンスとシグニファイア」
情報デザインやUIデザインでは、ユーザーが長い説明を読まなくても、「ここでは何ができるのか」「どのように操作すればよいのか」を理解できることが重要です。
そこで関係するのが、アフォーダンス(Affordance)とシグニファイア(Signifier)という考え方です。
アフォーダンス(Affordance)とは?
アフォーダンスとは、人と物・環境との関係の中に存在する「できること」を表す考え方です。
例えば、椅子には「座ることができる」、ドアノブには「握る・回すことができる」、コップの持ち手には「手で持つことができる」という可能性があります。
つまりアフォーダンスは、「使い方を説明する表示」そのものではありません。その物や環境によって、利用者がどのような行動を取ることができるのかを表しています。
シグニファイア(Signifier)とは?
シグニファイアとは、その対象をどのように操作すればよいのかを利用者に知らせる手がかりです。
例えば、ドアに書かれた「押す」「引く」という文字、Webサイトでクリックできることを示すボタンの形、リンクの下線、スクロールを示す矢印などがシグニファイアにあたります。
Webサイトやアプリでは、実際の物体のように触って確認することができないため、シグニファイアが特に重要になります。ボタンなのか、ただの装飾なのか分からなければ、ユーザーはその都度「ここは押せるのか」と考えなければなりません。
簡単に整理すると、
アフォーダンス=何ができるのか
シグニファイア=それをどうやって気づかせるのか
という違いがあります。
例えば、押して開くドアに大きな取っ手が付いていると、多くの人は「引く」と判断してしまう可能性があります。その場合、「PUSH」「押す」と表示することで、正しい操作方法を伝えることができます。
良い情報デザインでは、こうした手がかりを適切に設計することで、説明を必要以上に増やさなくても、利用者が自然に理解し、行動できる状態をつくります。
まとめ
情報デザインとは、文字や画像をきれいに配置することだけではなく、情報を整理・分類・構造化し、受け手が理解・判断・行動しやすい状態をつくることです。
情報の優先順位を決め、関連する情報をまとめ、不要な情報を減らし、文字・図・写真・色・アイコン・余白などを適切に使うことで、複雑な情報を理解しやすい形へ変えていきます。
IIIDが示しているように、その対象はサインや地図だけではありません。時刻表、マニュアル、フォーム、データビジュアライゼーション、Webサイト、契約、法律、医療情報など、人が情報を理解し、選択し、行動するあらゆる場面に情報デザインが関わっています。
また、LATCHによる情報整理や、近接・整列・反復・対比といった視覚的な整理、アフォーダンスやシグニファイアといった「利用者がどう理解し、どう行動するのか」を考える視点を取り入れることで、より分かりやすく使いやすいデザインにつながります。
情報デザインで最も大切なのは、発信する側が「伝えた」と考えることではありません。
情報を受け取った人が、必要な情報を見つけ、意味を理解し、正しく判断・行動できること。
そのためには、「何を伝えたいか」だけでなく、「誰に伝えるのか」「その人は何を知りたいのか」「どこで迷うのか」「どの順番なら理解しやすいのか」を考える必要があります。
情報が増え続ける現代だからこそ、情報をただ増やすのではなく、必要な情報を、必要な人に、分かりやすい形で届けることが重要です。
「伝える情報」を「伝わる情報」に変えること。それが、情報デザインの大きな役割です。

