【ネガティブな発言は/攻撃的な発言に『水を差す』UI】
近年問題視されているSNSの問題を解決できないかという試み。
社会的にネットリテラシーが求められていますが啓発や教育だけではその問題を解決することはできません。
そこで誘導と体験によってネットトラブルから意識的に回避するシステムを提案しました。
問題の明確化
「誹謗中傷」や「モラルの無い発言」のほとんどはSNSで発信されています。
こうしたSNSをはじめとした、ネットの世界では気軽に誰でも情報発信が可能になったためルールの整備される前に、
問題は大きくなり、大小兼ねて無法地帯になりつつあります。
その結果ネット社会にとどまらず、現実世界にも大きく影響し、誰かが傷つく言葉がもう一般的に使用されてつつあります。
実際に残念ですが自殺に追い込まれた事件が多くあります。
しかし、今から規制やルール化をしてしまうと新たな問題が生まれてくることは明らかです。
そのため自己判断での問題を解決を促すため誘導と認知の力で解決する必要があると考えました。
まずは原因と現状の把握をし、大きく3つの問題があると考えました。
問題①ネットリテラシー
大勢が利用するものなのでSNSの中には、ネットマナーやエチケット、他人を尊重する意識が不足している人がいます。特にSNSは近年急速に発展したため、「知らなかった」や「このぐらいならいいかと思った」などの意識の低さからくる誹謗中傷やモラルの無い発言が発生しやすいと考えています。また、擬似的に限定した人間しか見れない状況にすることも可能なため、全世界に繋がっているインターネットを使用しているという認識が下がってしまうこともあります。
問題②アカウントの匿名性
SNSはユーザーが匿名でアカウントを作成できるため、実際の身元が露見するリスクがなく他人を攻撃できます。この匿名性が、誹謗中傷や攻撃的なコメントを助長し、インターネット上でのモラルの低下を引き起こしています。例えば、有名人の方を中心に気軽に情報発信しファンなどと気軽にコミュニケーションが可能になったため、距離感を勘違いしてしまった結果、間違った行動をしてしまうことも多くあります。この例は表面化が難しく発覚した時にはもう遅い、なんてこともある問題です。
問題③同調性・集団心理
インターネット上では、特定の意見や行動に対する同調性や集団心理が強まります。人々は、他人の意見や行動に影響されやすく、同調圧力に弱いため、一度ネガティブな動きが始まるとそれに同調してしまいやすいです。感情的になると、『嘘がないか』どうか疑うことなく、自分の信じたいことを信じる傾向があるため誰も勢いを無くすことができない結果につながります。これがヘイトスピーチや誹謗中傷の拡散、攻撃等を助長する要因の一つです。
問題の分解
上記で問題を明確化しました。それを分解し解決への糸口を探します。
まず、攻撃的な発言の解釈の幅は人によって違います。
ネットリテラシーの項目で記述しましたが「知らなかった」や「このぐらいならいいかと思った」という事実が多いです。
次に、ライブ感です。
SNSというのは流行り廃りが激しい世界です。流行に遅れないように流れてきた情報に思ったことをすぐに発言する必要があります。
その結果、問題③でお話ししたように「嘘がないかどうか」や「感情的になっていないか」という確認が自分一人なら取流ことが難しいです。
よく、「人に話す前に考えてから話す」ように言われたご経験がある人が多いと思いますが、ご経験の通り感情的になったりその場のノリを優先させてしまうため、難しいです。
SNSの恐ろしいところはそれが一生残り続けるデジタルタトゥーになりうるということです。
消したとしても消えることはありません。
そうした中で感情的な発言を投稿してしまったら、周りに与える影響は考慮することはできません。
分解の結果、深い知識と強い憎しみから発言しているのはでなく自分の考えやその時の感情を、フィルターを通さずそのままSNSに投稿していることが一番の問題だということがわかりました。
もちろん、悪意がある場合もありますがそうしたことは法律で規制すべき内容です。
今回は無意識の内に誰かを傷つけている可能性を取り除く方法に絞って解決方法を考えます。
解決法
問題の分解の結果、フィルターを通さず自分の考えを後先考えずに発信してしまう点があるということです。
特に中学生や高校生など、デジタルに本格的に触れ始めた年代はリアルとネットの違いをはっきりと把握しきれていないため、そんなつもりじゃなかったのに…という結果に陥りがちです。
なので今回のメインターゲットは中高生にしSNSに対するアプローチの方法を体験的に学習でき予防できる方法を提案したいと考えました。
解決するには自身で確認する作業を挟むことで解消できます。
アンガーマネジネントでは6秒ルールというものがあり、6秒間冷静に落ち着くことで怒りを抑えることができる方法です。
また心理学者ショーン・エイカーによると『人間の衝動はわずか20秒まで』とされています。
つまり自分で考え直す時間と確認があれば衝動的な発言は大体抑えることができます。
結果『誰かが傷つく可能性があるというのを投稿前に明示することで認識してもらう』という解決方法を行います。
そうした誘導を今回は『水を差す』行為でアピールを行うことにしました。
①投稿までの待機時間の付与
投稿する前に、ユーザーに6秒間の待機時間を与えることで、ユーザーは自分の投稿内容を再考する時間を持つことができます。
この待機時間は、ユーザーに冷静になり投稿の内容やその影響をより深く考える機会を提供することで、衝動的または適切でない投稿を減少させることができます。
②音声による確認
投稿前に音声によって内容の確認を行うことで、ユーザーは自分の言葉がどのように感じるかを理解するチャンスを得ます。
言葉が音声で聞こえることによって、これ言われたらと言われた人のことを考えることができます。
ユーザーはよりネットという不特定多数に向けての発言はどういうものかという責任を再認識し投稿することが可能です。
③変換予測による『誰も傷つかない表現の提案』と『危険性の認識』
テキスト入力中に変換予測で優しい言葉の提案を行います。
これによりユーザーは誤解や不適切な表現を未然に防ぐことができます。また、その発言の及ぼす影響や危険の可能性を提示し考え直すキッカケを与えます。
変換予測による確認が、ユーザーにとって自己編集やセルフチェックのきっかけとなり、より適切で思慮深い言葉選びを促すでしょう。
medium.
普段から身近にありすぎて認識しづらい存在(媒体)を常に認識することで現実からネットに投稿していた認識をハッキリさせる。
メディアを見ることをやめさせることはできない。ではメディアの見方を変更し情報の正しさを常に自分で審議をかけられる状況を誘導と体験によって作り出すことを目標に制作しました。
2020年 岡崎竜久 卒業制作 UIの提案